Syllabus
シラバス照会

<< 最終更新日:2026年03月27日 >>
基本情報
科目種別 法学部専門教育科目 授業番号 G0042
学期 前期 曜日
科目 法律学政治学特殊講義(中国政治論) 時限 2限
担当教員 平野 聡 単位数 2
科目ナンバリング
※2018年度以降入学生対象

担当教員一覧

教員 所属
平野 聡 政治学コース

詳細情報
授業方針・テーマ 中国を取り巻くアイデンティティの政治
習得できる知識・能力や授業の
目的・到達目標
 日本を取り巻く国際環境が不透明さを増している中、とりわけ中国という国家のあり方が大きな影響を与えていることは常にさまざまな場面で取り上げられているところであるが、学生の皆さんは、中国の具体的な姿や、中国の指導者や人々がどのように考えて行動するのかということについて、どの程度ご存知だろうか。日本の将来を考えるときに、中国がその思想的原動力としているナショナリズムの論理と、それゆえに引き起こされる様々な緊張の由来・歴史を知ることは、ますます欠かせなくなっている。そこでこの講義では、中国の国家権力や主流なナショナリズムの考え方を紹介するとともに、その中に内包された思想的問題や国際関係の変動の複合ゆえに摩擦が起きている、新疆ウイグル自治区・チベット・モンゴル・台湾・香港といった地域の問題を、歴史的・思想的な視点から、総合的に俯瞰・把握できるようにする。
授業計画・内容
授業方法
 冷戦の崩壊以来西側諸国が主導してきた、自由で開かれた価値観・法の支配を旨とするグローバリズムのあり方が、各国の疲弊の中で揺らぎつつあり、中国も米国も自国最優先の姿勢に傾く中、アジア太平洋地域の安全保障環境が変わりつつある。このような中、中国はたとえ経済的な波風が立とうとも、「富強」を目指して共産党主導の経済発展を続けるためには、彼らが理想とする「国家の統一」と「社会の安定」を実現し、人々の心を固く団結させる必要があると考えている。
 そして中国は、このような立場と必ずしも相容れない人々、すなわち主要な少数民族や香港・台湾、さらには国内の意義申し立て一般に対して、厳しく強硬な態度を取っている。また、このような中国で生み出された経済的利益を、自由と法の支配を旨とする国々が貿易を通じて得ることは妥当なのかという議論が起こり(人権デューデリジェンス論)、また中国自身も、外国からの批判的な言説に対して経済的威圧によって対抗する姿勢をはっきりと示している中、中国経済と今後どのような関係を続けるのかということが様々に議論されている。
 そこでこの講義では、このような中国のナショナリズムや政治体制のあり方がどのようにして形成され、今日のような姿になったのかを歴史的な視点から明らかにする。そして、主流なナショナリズムのあり方とは距離をとろうとする人々のアイデンティティーにも着目し、前近代(今日の中国の領域を形成した清朝)から今日まで、中国文明と他の文明・宗教文化の間に展開されてきた交流と葛藤の歴史の中に、様々な地域の問題を位置づけて解説する。
 以上を通じて、いまの中国とその周辺で立ち現れている問題は、単に「中国の問題の難しさ」「民族問題」「統一か自立か」といった論点だけではない、文明史的な広がりと深みを持った興味深い問題であることを知って頂きたい。また、単に様々な問題や対立があるのではなく、その背後には様々な地域の社会と文化の魅力というものがあり、そうであるがゆえにしばしば摩擦も起きてしまうのだということを知って頂けるような講義としたい。
 
講義は以下の通りである。
(努力目標であり、論点満載ゆえにお話ししきれない可能性もあることをご承知おき願いたい。いっぽう、中国関連で突発的な問題が起こった場合、その都度担当者の視点を中心に解説する)

第1回 中国を取り巻くアイデンティティの政治・総論……2022年11月「白紙運動」の衝撃と景気低迷の時代における「愛国」のゆくえ
第2回 中国文明と「外」「他者」……モデルとしての中華世界論とその限界
第3回 清朝史を読み解く……内陸アジア史の展開が準備した近代中国の領域と、チベット仏教・イスラームも含む多様な秩序イメージの交錯を考える。
第4回 清朝史を読み解く (続)
第5回 近代国際関係の流入に伴う緊張
第6回 政治・社会の近代化「中国人」「中華民族」の創出
第7回 内憂外患と「統一多民族国家」・共産党体制……なぜ連邦制・国家連合は認められないのか
第8回 改革開放と少数民族政策……個別性への配慮から「中華民族共同体意識」への同化へ
第9回 モンゴル近現代史
第10回 チベット近現代史
第11回 新疆・トルコ系ムスリムの近現代史
第12回 中国東北地方・朝鮮族の近現代史
第13回 台湾史の形成と中国ナショナリズムとの緊張
第14回 香港都市文明の形成と「一国二制度」
第15回 成果の確認
授業外学習 毎回kibaco経由で簡単な確認の小テストを実施し、復習の機会としてもらうとともに出席点とする。
他にも、常日頃から、東アジアとその歴史を取り巻くニュースに注意すると良い。
テキスト・参考書等 教科書は指定しない。
毎回レジュメ・資料・パワーポイントを配付する。
授業当日午前零時までにkibacoにアップロード→各自ダウンロードして準備されたい。

参考図書は、拙著『大清帝国と中華の混迷』『「反日」中国の文明史』、熊倉潤『新疆ウイグル自治区』、楊海英『墓標なき草原』、中国ムスリム研究会編『中国のムスリムを知る60章』、周婉窈『台湾の歴史』など、折に触れて紹介する。
成績評価方法 上記kibaco経由の小テストと学期末の試験を総合的に勘案して評価する。
質問受付方法
(オフィスアワー等)
非常勤講師のためオフィスアワーは設定できないものの、授業終了後の質問を歓迎する。
(午後別件のため、あまり長い時間は取れない点をお詫びします)
また、メール(宛先はYQL07500@nifty.ne.jp)及びkibacoによる質問も歓迎。
興味深い質問であれば次回の授業の冒頭で詳しく解説し、参加者の皆さんと共有することとしたい。

特記事項
(他の授業科目との関連性)
備考