授業方針・テーマ |
本授業の目的は、現代の基礎的な科学的理論--論理学、数学基礎論、コンピュータ科学、基礎物理、認知科学・心理学基礎論などの、ごく初等的ではあるが、根幹的な部分--を素材に、近年の哲学が、それらについてどのような興味ある省察を行っているかを、予備知識を仮定せず、できるだけわかりやすく解説することである。 現代科学とそれに基づく多様な技術が、ウェブやAIなどの情報システムはもちろん、地球上の多様な自然的・人工的環境、さらに、経済的・政治的・社会的な制度や機構の設立管理運営など、私たちの生活のあらゆる局面に浸透し、その根底を支えていることは誰でも知っている。にもかかわらず私たちは、(確かに無理からぬことではあるが)大半の科学理論について正確で詳細な理解を持っておらず、何かの具合で疑問を感じたとしても、たかだかメディアと教育現場に流布している(一般に必ずしも信頼できない)通説などを見聞し(もちろんそこには有用なものも多々ありはするが)、あとは自己流の憶測で何とか納得する、といったことがほとんどである。このこと自体、現代の文化状況の観点から見ればかなりシリアスな欠陥と言うべきだろうが、ここにはさらに次のような問題がある。 哲学というと、ふつう古代ギリシア以来の傑出した思想家の著作などを昧読し、人ははいかに生きるべきかを考究するものと考えられがちである。そしてそれはもちろん間違いではない。しかしそれと並んで近年ますます発展している重要な哲学の潮流がある。これらは一般に「科学哲学」「論理学・数学・言語の哲学」「情報の哲学」「計算機科学の哲学」などと呼ばれるるものであり、そこでは、そもそも科学理論を形作る基本概念とはどのようなものか、なぜそれらは自然の構造や過程はもちろん、私たちの理念的文化的世界の構造をも解明する力を持ち、十分信頼できる知識や情報を私たちに与えることができるのか、といった問題が探究されている。遺憾ながら、特に私たちの国では、こうした新しい哲学の潮流が広く浸透しておらず、この結果、上記の問題(私たちの大半が科学についてごく浅い理解しか持てていないこと)のシリアスさをますます高めていると考えることができる。本授業はこうした状況の改善にできるだけ資することをその基本目標としている。
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習得できる知識・能力や授業の 目的・到達目標 |
(1)論理的思考力: 科学哲学、情報の哲学を中心とする現代哲学について、その最も基本的な概念や原理に関する俯瞰的な理解を得ることができる。さらに、現代論理学(記号論理学、数理論理学)の初歩にも触れることができる。 (2)綜合的思考能力: より一般的に、情報科学・認知科学などの現代的諸科学について、それらが哲学・論理学への関心を含む、より一般的で多様な日常的観点から見たときにどのような重要な意義と興味を含むかが理解できるようになる。 (3)倫理的判断力: 近年ますます重要性を増している、情報と科学技術をめぐる倫理的・道徳的諸問題についても、基礎的な理解と判断力を身に着けることができる。
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授業計画・内容 授業方法 |
授業計画。内容 出席者の関心に応じて話題の取捨選択・付加、取り上げる順序の変更などを行う場合があることに留意。 第1回:導入。科学の基礎を成す概念の論理的・哲学的分析、という問題。 第2回:分析の方法1・現代論理 第3回:分析の方法2・自然言語分析 第4回:分析の方法3・情報フロー理論 第5回:分析の方法4・行為の哲学 第6回:分析の方法5・計算の哲学 第7回:分析の方法6・対話の論理 第8回:分析の方法7・情報の哲学 第9回:まとめと回顧 第10回:事例分析1・認知科学的な問題 第11回:事例分析2・非認知科学的アプローチ 第12回:事例分析3・計算機科学的な問題 第13回:事例分析4・数学基礎論的アプローチ 第14回:事例分析5・確率論的な問題 第15回:今後のための展望
授業方法 各回、教員が解説を行った上で、出席者と内容について討議する。また、適宜、練習課題を課す。 特に、学期末のレポートについては、事前に受講者にドラフトを提出してもらい、教員が授業の場でこれらについて論評を加え、改善のアドバイスを行う。これは、講義の理解を深め、論理的な作文力を身に着ける役にも立つので、ぜひ積極的に取り組むこと。
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授業外学習 |
kibacoなどに適宜、教材や資料をuploadするので、各自これを利用して、事前学習を行い、また授業後も理解を深めるのに役立てること。 |
テキスト・参考書等 |
テキストはなし。教材や資料を適宜配布する(kibacoにもulする)。参考文献も授業で紹介する。 |
成績評価方法 |
授業への貢献と、学期末のレポートで採点する。具体的には、上記「取得できる知識・能力・・・」の欄で述べた(1)-(3)の各項目の達成度に即して評価を行う。 |
質問受付方法 (オフィスアワー等) |
オフィスアワーは授業の場で指定するが、下記アカウントにメールでアポイントを申し出れば、随時対応する。 岡本賢吾: fregewittgenstein●gmail.com (●は@)
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特記事項 (他の授業科目との関連性) |
特別な予備知識は仮定しないので、興味のある学生に自由に積極的に参加してもらいたいが、実際の内容は、論理学・数学基礎論・計算機科学などの基本的事項をある程度利用することになり、また他方で、古代から現代までの哲学に登場する多様な概念や論証に馴染むことをある程度必要とするので、各自、自習などを通じ理解と知識を補う必要がある。やり方がわからない学生は、適宜、質問・相談に来てほしい。 |
備考 |
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